ユウユの映画の時間

ディズニーすきです

ジャングル・クルーズ感想

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今夜の感想キャスは7月29日に劇場公開そして30日からはディズニープラスで配信公開もされている『ジャングル・クルーズ』です。

 

カリフォルニア、アナハイムのディズニーランド開園当時からあるアトラクション「ジャングル・クルーズ」の実写化映画。手にした者は、永遠の命を手にすると言われている月の涙を探すため、博士のリリーとその弟マクレガーは船長フランクと共にアマゾンの大自然に挑む。

 

リリー役はディズニー映画常連のエミリー・ブラント、マグレガー役には僕の好きな映画『くるみ割り人形と秘密の王国』のギャグ担当の2人のうちの1人を演じたジャック・ホワイト・ホール、フランク役にはロック様ことドウェイン・ジョンソン、プロデューサーもやってるとのこと。脇を固めるのはマット・デイモンのそっくりさんで知られるジェシー・プレモンスやエドガー・ラミレスとのことです。

 

ということで私は30日にいつものイオンシネマ幕張新都心のULTIRAの8番スクリーン、Dolby Atmosで鑑賞してきました。夕方に一回のみのDolby Atmos仕様の上映だったんですが半分は入っていたかなという感じでしたね。『ブラック・ウィドウ』の際も同じ状況で鑑賞したんですがその時はやはり満席だったのでちょっと寂しいというか、盛り上がっていない印象を受けますね。パンフレットも発売されていないということでやる気のなさも感じられますね。

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本作は2020年には上映も決まっていたんですが、言わずもがなコロナ禍の影響受けて、その流れを経てもなお、劇場公開に至った数少ない貴重な作品になるんですね。(実際に『ムーラン』、『アルテミスと妖精の身代金』、『ゴリラのアイヴァン』、事実上ブルースカイ・スタジオ最後の作品になる『スパイ in デンジャー』などは劇場公開を逃した。)

 

これはなぜ生き残れたかという勝手な私の想像なんですが、おそらく『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』(03)の大成功により5作目となる『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』(17)まで製作される人気シリーズになったことは言うまでもないですが、「ファンタスティック・ビースト」シリーズを降板させられる事態にまで影響したジョニー・デップのDV騒動やそれとは別にジェリー・ブラッカイマー・フィルムズとのファーストルック契約が既に終了していることを踏まえるとシリーズの続行はかなり難しそうな雰囲気なのでここは新しい実写シリーズを立ち上げたいという思惑があったのではないかと思いますね。『アルテミスと妖精の身代金』(20)は配信スルーにしてしまったのでかなりここに賭けていると思います。

 

『ジャングル・クルーズ』は、木曜日夜の試写会ですでに270万ドルの興行収入を叩き出しており、公開初日を終えた時点で、推定1,200万ドルから1,300万ドルの収益を見込んでいる。この金額は、ディズニープラスで公開され、初日に770万ドルの収益を出した『クルエラ』を大幅に上回っている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8b997d7a0e2910c3a1376ca85217a1e6c2ea6599]から引用。

 

現時点での成績でいうと良い方ではあるので続編の可能性は普通にありそうなんですよね。

 

では実際中身はどうだったのかというお話。

 

以下ネタバレをするので観ていない方は是非映画館あるいは画質はポンコツですがプレミアムアクセスで観てくださいね〜(笑)

 

今作は冒頭で述べた通りアトラクションの映画化企画なんですよね。『パイレーツ・オブ〜』や『カントリーベアーズ』(02)や『ホーンテッドマンション』(04)なんかが既にありますがどれもアトラクションと同じストーリーというよりは名前を借りただけの別物という位置付けだと認識しております。今作もその路線ではあるんですが同時にアトラクションからの引用は多くて思わずニヤリとするシーンが多かった。ちなみに逆輸入的に劇中に登場した地図とかは向こうのジャングル・クルーズに飾ってあるらしいんですね。『ホーンテッドマンション』にもマダム・レオタとかアトラクションの一部分を持ってくることはあったんですがウォルト・ディズニーイマジニアリングが参戦しているということもありまさにアトラクションの映画化という感じでしたね。ハワイではあるもののディズニー史上最大といわれる巨大なセットに加え実際にボートを走らせて撮影したというアプローチはブラッカイマーそのものやアトラクションの作りに寄せているんですね。これは『アフリカの女王』とかにも通じてくる話なんですがどの辺がどうだったと説明するにはアトラクションの歴史とかを参照すると非常にわかりやすいので今配信されている『ディズニーパークの裏側 〜進化し続けるアトラクション〜』がものすごくテンポ良く纏まっているので、1話はまさにジャングル・クルーズの回なので「それを見てください」って感じなんで(笑)、「是非、ご覧ください!!!」(笑)。ここで改めて話すよりはやっぱりそっちを観た方が面白いのでね...。まぁわかりやすいところで言うとフランクやリリーがエンジンを蹴るという動作はもろ『アフリカの女王』だったり、「トゥルー・ライフ・アドベンチャー」が元だから映画を撮るシーンがわざわざあるんだって言う気づきとかがあると思うんで観てくださいね〜。

 

では、それ以外の話をしたいと思います。今作でとてもフレッシュだった部分はそこにアトラクションがあるということですね。アトラクションそのものがジャングル・ナビゲーションカンパニー運営するジャングル・クルーズというツアーという設定なので割ときっちりシステム化されたアトラクション設定なんですね。「スター・ツアーズ」とか「タワー・オブ・テラー」のような、ゲストがあくまでもゲストとして体験できるアトラクションなんですよね。なのでアトラクションの一部始終を丸々映像化しても問題ないと。そしてその描き方が若干の自虐的でもある。開園当初からあるアトラクションなだけに最近は問題視され、リニューアルがもう目前に迫っているというアトラクションでもある「ジャングル・クルーズ」。こんな記事がありまして、日経ビジネスさんの記事によると(記事を読む)

原住民が“原始的で野蛮な首狩り族”として描かれてきたのだ。

 具体的には、その犠牲者とみられるしゃれこうべが集落に飾られていたり、威嚇するようにやりを振りかざしていたりした。こうした部分について、ディズニー側は「(刷新後は)これまでより正確に世界の多様性を映し出し、その価値を伝える内容になる」と説明する。

66年目の大改修 米ディズニー「ジャングルクルーズ」の問題部分:日経ビジネス電子版より引用。

と書かれていて映画版には登場しないと思っていたんですが、実はフランクが仕込んだそういった怖いイメージの部族という我々の先入観を裏切ってくる使い方でこれはうまいと思いましたね。ただ、裏切る展開をもう少し徹底して欲しかったですね。プロクシマがフランクとグルであることはすぐ見せないで引っ張るとか他にもいろいろあるんですが、置いておいて。要する反省の意味があると思いますね。あの使い方は。裏切りでいうとフランクが落ちる動作を多用するところはディズニーが比較的高いところから落とすことでそれは死を意味して敵を倒したことにしがちということのカウンターになっていますね。

 

偏見という話でいうとやっーとメインキャストの話をするんですが(笑)、リリーのキャラがやはり印象的。パンツを履いているだけで周りから変な目で見られ、男性である弟という立場を使わないと(おそらく)冒頭から流れる説明すらさせてもらえないという当時の不条理が突きつけられているという状況とそれでも月の涙を手に入れたいという願望が伝わってくるんですよね。ただ、月の涙がなぜ必要なのかが薄かったように思いますが。リリーの父親の死因とかに結びつけたらもっとすんなり入ってると思うんですけどね。まぁ『ナショナル・トレジャー』(05)のニコラス・ケイジ演じるベン・ゲイツとか(演説から始まる冒頭は2作目に似ている)『アトランティス 失われた帝国』(01)のマイロ・サッチごか科学者が突拍子もないことを言うと誰も信じてくれないというのはあるあるではあって、スタジオライカ作品『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(20)は逆にこれが男性社会の有害さを描く方向もあるのでチェックしていただきたいんですけれども...。ちなみにリリーがよくやる鍵を開けるという動作は大事になってくると言おうと思ったら最後の大仕掛けはレバーを下げるだけっていうね...。それは置いておいてリリーのキャラのいわゆる女性的な偏見の部分は弟のキャラのフリになっていてそこがギャグ要素になってるんですよね。見た目外しギャクと言いますか、例えばフランクの船にすごい大荷物を運ぼうとしてるヤツはマグレガーだった!みたいな。(これはこれで過剰な表現だとは思いますが)。リリーの弟マグレガーに関してはジャングルにぶっちゃけ向いてないやつってことで今回も面白いんですがやはり中盤で明かされる告白は公開のかなり前から話題になっていましたね。THE RIVERさんの記事によると(記事を読む)

このキャラクターはディズニー映画において、史上初めて本格的に登場するゲイのキャラクターとなるだろう。実写版『美女と野獣』(2017)でジョシュ・ギャッドが演じたル・フウはゲイという設定だったが、物語上その設定がきちんと示されることはほとんどなかったのである。

(中略)

本件は、真実が明らかになる以前から、インターネット上で早くも大きな物議を醸すこととなってしまった。大きなポイントは、この人物を演じる俳優・コメディアンのジャック・ホワイトホールが異性愛者であることだ。

https://theriver.jp/jungle-cruise-gay-report/より引用。

ということでディズニー映画ではDisney +配信の『殻を破る』が記憶に新しいですが、劇中ではっきりとゲイであることが示唆されるというキャラクターは劇場公開用のディズニー映画では初めてといえると。ここで問題になってくるのは、そのキャラクターの存在意義ですよね。私はこの映画が貫く一つのテーマ性に関係するので、反対意見はあるもののストーリー上は必然性のある設定だったと思います。この映画のテーマの一つには孤独があると思います。監督のジャウム・コレット=セラは主人公を孤独にしがちと言う傾向がある。例えば『アンノウン』(11)であれば交通事故に遭った主人公が眠りから覚めると、身分を証明するパスポートやらなんやらが全部なくなっていて、出席するはずだった奥さんは別の人とパーティーに出ていて、お相手は自分の名前を名乗る人物で、経歴も肩書きもそっくりそのままで自分という存在が目の前にいる、つまり主人公が世間的に孤独になる映画なんですよね。わかりやすいところで言うとA級サメ『ロスト・バケーション』(16)なんかは1人でサメと戦う一部始終を1時間半やる映画でした。

 

孤独でいうとやはりドウェイン・ジョンソン演じるフランクが超孤独キャラだったていうね...(笑)。400年もジャングル・クルーズやっているという呪われた船長...。もうここまで来るとかわいくなってきますね。400年間「滝の裏側でーす!」なんてやってたんですから(笑)。シュバイツァーの滝みたいなのじゃなくて水路みたいなやつでしたが。ということで、女性の博士である、性的思考で親から勘当されてしまった弟、400年ジャングル・クルーズの刑になったマッチョ、このフランクのキャラが歴史そのものを体現してるようにも思えますが、この訳ありな3人が結束して歴史の残骸アギームたちに立ち向かう構造になっていてなにとは言いませんが過去の亡霊と対峙するという最近のディズニー映画のトレンドをよくも悪くも捉えているんですよね。

 

ただ、ヴィランの魅力という部分が少し弱いかなという気もします。ドイツの王子さまであるヨアヒム。演じたジェシー・プレモンスさんもう少し大袈裟でも良かったと思います『TENET テネット』(20)のケネス・ブラナー演じるセイターのあの感じとか、ドイツで言えばそれこそ『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ演じるヒトラーみたいにするとか、冷酷って訳でもないし微妙な演技なんですよね。脚本の悪さも影響してると思いますが。アギーレも蛇がうにょうにょまとわりついて(『悪魔バスター★スター・バタフライ』の)ロンビュラスよりも使いこなしていましたが彼の目的って娘の病気を治すためなんですよね。でも呪われて400年間石だった訳で蛇とかはいわゆるフライングダッチマン号でビル・ターナーの顔にヒトデがついてるみたいな感じだと思うんですが、そこには親子の物語つまり今回なら娘と父の話がアギーレというキャラクターの背景に横たわっているんですが、だったら復活した時に絶望するとかそういう厚みを持たせるような描写が少なくなんか気持ち悪いだけのヴィランになってしまった。彼が花を奪いに行く意味があまりわからないんですよね。特にヨアヒムとの仲の良さとかあるいは裏切りの匂いとかそういう描写もなくどう連携とってるかもちょっと物足りない。蜂が連絡係な部分は面白いですけどね。でも両者ともキャラクターの深掘りがないので終盤まで何だかなーという感じ。『パイレーツ〜』であればバルボッサという腐れ縁を一作目から思わせるキャラクターの作り込み、デイヴィ・ジョーンズならあんなタコみたいな見た目ですけどピアノという小道具と哀しげに響くその音で感情だとかが伝わってくるし、いかにパイレーツが面白かったかが際立ってしまうという...。小道具の面白さも少ないですからね。向こうは一発が込められた銃とか北を指さないコンパスとか一枚の金貨とか。『ナショナル〜』だったらそれが独立宣言者からメガネからお札やらだった訳ですよ。『アフリカの女王』だったらそれはボイラー、スクリュー、お酒、魚雷だったりするのでね。

 

アクションもカットが多い上に暗いところでCGの動機もよくわからない敵が絡まったりしてくる訳ですよ。フランクが剣振り回してると思ったら次のカットでは両手何も持ってないまま首絞められてるとか「ん?」ってなるシーンも多い。出港するときの派手なアクションとか無駄に潜水艦が乗り上げるシーンとかそういう大掛かりなシーンがもっと観たかったですね。乗り上げた潜水艦はそのあと普通に出てくるのも笑っちゃいましたが。

 

全体的には意外な展開の連続で楽しいですが終盤に行くにつれて謎が増えていくのとキャラの描き不足による薄っぺらさが目立ってしまう一作だなと思いました。あと、『パイレーツ〜』同様月の光がキーポイントなんですがそれの使い方も一応のタイムリミットにはなっているんですがその設定をあまり意識せずに物語が進むので取ってつけたようだし視覚的にはまんま『カラー・アウト・オブ・スペース ー遭遇ー』(20)って感じで本来なら2020年の夏はマゼンタに染まっていたという...。『パイレーツ〜』の月明かりに照らされると骸骨の見た目になるというアクションと視覚的、画面全体の面白さが素晴らしいんですがそういう感じでもないという。そしてあれは結局フランクに使うという。フランクは運命に身を任せこの世から引退する旨を話していたのに「なんで?」。一枚しかないのに。というか一人一枚なんですかあれって。繁殖させて増やすんならその後でまたあそこに戻ってくるようにすれば続編も作りやすかったのでは?

 

設定とキャラクターの深掘りが浅いので飲み込みづらく面白さが薄まってしまっている。アトラクションの映画化にして斬新だった部分もありましたがその分もう少し面白く出来たのにというもったいない作品でした。

 

以上です!