ユウユの映画の時間

ディズニーすきです

『ミラベルと魔法だらけの家』感想キャスネタバレあり書き起こし

今夜の感想キャスはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の長編アニメーション映画の記念すべき60作品目の『ミラベルと魔法だらけの家』です。

 

f:id:yukoji123:20211204121807j:image

 

魔法の力に包まれた、不思議な家に暮らすマドリガル家。
家族全員が家から与えられた“魔法のギフト(才能)”を持つ中で、少女ミラベルだけ何の魔法も使えなかった。

ある日、彼女は家に大きな”亀裂”があることに気づく─

(作品紹介・あらすじ・キャスト情報|ミラベルと魔法だらけの家|ディズニー公式から一部抜粋)

 

監督はバイロン・ハワードとジャレド・ブッシュの長編55作品目『ズートピア』コンビ。音楽は『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』で長編初監督デビューも果たし、ディズニーへの貢献度も計り知れない天才、リン=マニュエル・ミランダ。声優はステファニー・ベアトリスなどです。

 

ということで、原題『Encanto』。Google先生によると魅力という意味のスペイン語ですが、日本語タイトルは『ミラベルと魔法だらけの家』。よくある単語一文字パターンで「配給会社さんの心中お察しします。」といった感じなんですが、まずはやっぱりタイトル覚えてあげてね〜っと言った感じですね。『ミラベルと魔法の家』でも『アナベルの呪いの家』でもないですからね!(笑)『ミラベルと魔法“だらけ”の家』というのが正式なタイトルですが、吹き替えで1回観てまいりまいした。本当は字幕で観たかったんですよね。ディズニーのミュージカル映画は有名な話ですが、リップシンクを重視している関係で『アナと雪の女王』の「Let It Go」なんかは日本語だとヴィラン誕生ソングに受け取り辛い部分とか割と大事な部分の意味が異なってきてしまうという例だとか、『アナと雪の女王2』の「Some Things Never Change」の歌詞の内容量が違いすぎる例があったのでディズニーミュージカルアニメの新作となればどっちもマストなので、もっと(上映回数を)増やして欲しいっていうのはまず言っておきたいですね。ただ、今作は映画内に2ヶ国語、英語とスペイン語が使われている。スペイン語の楽曲に関しては日本語吹替でも字幕が出るという特殊な形態でしたのでそこの言語の違いみたいなものは把握できる、逆にスペイン語と英語の区別があんまりついてない俺にとっては逆に親切かもしれない作りなのはもっと評価されて良いような気もします。

 

全体的は評価は概ね好評と言った印象の反面、「期待値がそんなに高くない状態」で観にいったという人も多いのもまた事実かなといった感じです。あと実際に聴いて回ってみるとあまり良く思っていない人もちらほら。私はどうだったのかということでこの『ミラベルと魔法だらけの家』。

 

まず、タイトルの引っかかるのがやはり“だらけ“の部分だと思います。これは要するに、魔法のギフトを持っていないミラベルが内心感じている、持たざる者の辛さみたいな。”だらけ“って基本的にマイナスの意味で使われることが多いので、そう言ったニュアンスが込められていると思いますね。そして、そこよりも特に根深いテーマとなってくるのが”家“の要素ですね。『DUNE 砂の惑星』的でもあるし『スター・ウォーズ』的でもある家系に関する話で、舞台がほぼ家というのが特徴的ですね。家族の紹介ソング「ふしぎなマドリガル家」がもう最高ですね。マドリガル家のメンツがなんとなく歴代ディズニープリンセスに似てて、イサベラはジャスミンっぽいし、ペパは感情で天気変わっちゃうエルサ、アントニオの動物と話せるも良い例ですね。お母さんはラプンツェルですかね。ブルーノはシンバか『トゥモローランド』のフランク・ウォーカー、未来が見える装置を作ってトゥモローランドを追い出されたあいつかな?。誰とは言いませんがミゲルのひいひいじいさんが生きてたみたいな感じにも似てる。顔とか。そんでこの曲、たくさんいるキャラの紹介として申し分ない出際の良さ。リンマニュ繋がりで子どもに語る感じは『イン・ザ・ハイツ』に少し似てますね。いろんなギフトを持つ家族の中で1人だけギフトがないミラベルの「家族は誇らしげに語れるが、自分のことはノータッチ」なあの感じが絶妙。ミラベルの不憫さみたいなものともう一つ家の名前に気づかぬうちに縛られているという状況を暗に示している。マドリガルという看板を背負う家族の話がこの『ミラベルと魔法だらけの家』なんですね。

 

 これは監督自身語っている「自分の家族のことを私たちはどれだけ知っているのか?」という問いが重なってくる。ミラベルから見た家族はとっても良くない感じに描写されていて、観客もそれを追体験する構造。これ今やってる『ディア・エヴァン・ハンセン』とほぼ被っていて、あれは精神病を患っている主人公が実は自分以外にも悩みを抱えていると気づいて成長する話。きっかけは嘘、この嘘がはっきりこの作品の賛否を分けているんですが。ある嘘によって自分ではない偽りだけど理想的な自分になっていく展開が用意されていて、補完できる部分も多いと思います。本作もブルーノを追う過程において家族の悩みに触れ合う、文字通り心の扉を開いてのあの曲なんて展開もありますが。悩んでいるのは自分だけではないことに気づくようになる。

 

 ただ、『ディア〜』から差別化できるのはギフトという要素ですね。ギフト、つまり才能、それを持つことによる社会的な役割ってことで良いと思います。魔法によって与えられた“役割“と”本当に自分がやりたいこと”とか「大いなる力には大いなる責任が伴う」よろしくな“責任”の部分で葛藤していたということにミラベルが気づくことが大きなポイントになっている。例えばそれは現実世界でもたくさん置き換えが効く話。当然なんですが、ミラベルはギフトによって紐付けされた役割はないものの社会から見たらマジョリティ側で、家族内での非常にごく小規模な特殊な人たちの集団にいる主人公ならでは。この映画珍しいのは、ミラベルの主観でほぼ進んでいくんですね。それは、ミラベルが思っていることを観客に共有できるからですね。わざわざ言いませんが『アナと雪の女王』との共通点が多い本作。その中でも、違う部分はミラベルから見た、見えている家族が描写される。魔法で苦しんでいる様子、楽しいアナとエルサの葛藤みたいなものはミラベルからは当然見えないので序盤はイサベラは完璧だし、ルイーザはパワーで軽々ものを持ち上げて簡単に役に立っている。でも、ギフトがある方もない方も周りが思っている以上にプレッシャーを感じて悩む、誰も幸せになっていない悪循環が生まれているという全体像が把握できるようになると。それを断ち切れるのはミラベル。ブルーノの預言で写っていたのはまさに「全てを破壊し、全てを繋げ!」的な救世主の姿ミラベルだったのではと思いますね。あのラストの展開は役割の支配を断ち切って、家族の輪が社会に広がる。マドリガル家が抱え込んでいたものが社会全体に解き放つという意味だと思います。ミラベルは魔法がないからこそおばあちゃんとの対立関係になる。なぜなら、おばあちゃんはギフトを持ってないからですね。火を守るという、“役割”にずっと縛られていたのは実はおばあちゃんも同じだったというシーン。ラーヤ並みにカットが不自然なのは置いといて、素晴らしいシーンですよね。そしてミラベルはおばあちゃんと同じように家族を守ったという意味でこれも家族の話ですが、『魔法戦隊マジレンジャー』みたいに勇気に魔法が応えてギフトを授けると。これ、『チキン・リトル』的とも言える。チキン・リトルはチビでメガネでホラ吹きというレッテルまで貼られてるやつで、宇宙人を追っ払ったことで最後英雄になりますが、そんなことはどうでも良くて、父親の信頼を取り戻せたことが何より幸せだった。名誉の回復じゃなくて父親に認められたという部分そして、自分を信じてほんの少しの勇気を持って生きていくことが、周囲の信頼を得て、自分に自信が持てるということを彼は学ぶんですよ。ミラベルはさらにそこに周りの人々の考えも入っている。ミラベルが黄緑色のメガネしてるのは見るという意味と別にチキン・リトルのやり直しだったんですよ!なんのギフトかがわからないのはそれは観客自身が映画館を出た後に実感していくものとしてではないかなと思います。もしくは、他人と関わることでさっき言った全てを繋ぐ才能が自ずと付いていき魔法を授かったとも取れる。マジレンジャー的に言うならば家族を守ろうとするミラベルの勇気に魔法が応えた!ってことですね。魔法が与えられることそもそもどうなのか問題はありますが、おばあちゃんの魔法はないけど家族を育てて繁栄させたということと、母親の魔法による貢献の折衷としての存在。後で話す短編ともテーマ的に重なる。誰も否定しない姿勢が素晴らしい。10年のWDAS長編映画の特別な能力を持つ主人公シリーズに加えて00年代の普通の主人公シリーズとを同居させたという意味で貴重な作品だと思います。

 

あと曲。ブルーノの曲「秘密のブルーノ」が大きな伏線になっていて、ぶどうとか声が聞こえるとか今後の展開を示唆する内容になっている。イサベラとの仲直りソング「本当のわたし」が個人的に1番好きですね。「増していくプレッシャー」なんかはミュージックビデオっぽい。クリストフの「Lost  in  the Woods」的なバカっぽさ含めて見所です。だだ、全部の曲いいんですが、ミュージカルシーンがちょっとね...。例えばさっき言った「不思議なマドリガル家」。最高なんですよ?朝起きてミラベルが机にお皿並べて。みんなが起きる前なのに。頑張ってる!って感じで。カシータも階段のシーンとか組み上がる感じがフォートナイトっぽい感じで最高。イサベラの紹介かと思ったらミラベルが立ってたところが持ち上がってルイーサが橋を持ち上げてる!っとか視線の誘導最高なんですが。この曲を歌うのは基本的にはミラベルとおばあちゃん。街の人と子どもはエキストラとして基本的にはこの2人。おばあちゃんパートは「役割」についてのパートがちょっと挟まる。この曲の終わり際は純粋無垢であるからこその忖度なしの質問、「ミラベルのギフトは?」と聴き、ミラベルコール。「ミラベル!ミラベル!ミラベル!」となるんですがそこでおばあちゃんの叱るような声「「「ミラベル!」」」って言ってサントラでは終わってるんですけど、その後。「あなた何してるの?!」っていうんですよ。お前さっきまで「みんなのために魔法を使いましょ」とか歌ってただろ!とか。

f:id:yukoji123:20211204102834j:image

これまた1番好きな曲「本当のわたし」という曲で、イサベラの悩みが解放されるいい曲で、ミラベルも歌うという仲直りソングでもあるんですが。これ、最初はイサベラの部屋の中なんですがどんどん家の外を縦横無尽に駆け巡る非常に盛り上がるシーンなんですが、それを俯瞰して見てるやつが...。おばあちゃんが見てる!!!歌ってるところを見てる!!!これKH3のアナ雪と同じ。レリゴーをソラ一行が見てる!!!それってどうなのよ!!!とかね。まぁ重箱重箱。(ユウユの補足12/28 『アベンジャーズ エンドゲーム』の『ガーディアン〜』のオープニングに対するメタ視点)

 

f:id:yukoji123:20211204101715p:image

 

短編のについて!

『ツリーから離れて』というアライグマ親子を描いた作品。動物が喋らない系、『ひな鳥の冒険』のような習性に基づく苦難を乗り越える話。厳しいお父さんの教えを次の世代にどう繋ぐか?の物語。ミラベルと同じようにそれまでのやり方を踏襲して、新しい方法や価値観を提示していくという動物っぽい物語でした。短編とのリンクは毎回見所です。

 

 たしかに、ミラベルは粗も目立つし手放しで面白いと言えるかと言ったらそんなことはないですが60作品目の節目の大事な作品なので年内に配信されるらしいですが、行けるなら絶対に映画館で見た方が良い作品です。