ユウユの映画の時間

ディズニーすきです

私ときどきレッサーパンダキャス書き起こし

今夜の感想キャスは3月11日からDisney +で配信されている、ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の新作映画『私ときどきレッサーパンダ』です。

f:id:yukoji123:20220324135745p:image

母親の前ではいつも真面目で努力家のメイだが、ある出来事が原因で本来の自分を見失い、感情をコントロールすることができなくなる。悩みを抱えたまま眠りに落ちた彼女が翌朝目を覚ますと、彼女はレッサーパンダに変身していた...

Yahoo!映画より抜粋

 

忘れもしません。『Bao』で第91回アカデミー賞短編アニメ映画賞を受賞したドミー・シーの長編初監督作品。主な声優にメイ役はロザリー・チアン。メイの母親役には『ラーヤと龍の王国』のヴィラーナ役もこの方で意地悪ママが似合うサンドラ・オーでございます。

 

ということで、『私ときどきレッサーパンダ』私は2回観ました。毎回映画館の様子も一緒に語るんですが『ソウルフル・ワールド』から続くピクサー新作配信スルーの風潮もあり、配信限定での公開になってしまいました。何回も観れるというメリットはありますがやっぱり映画館で観たかった。歌もそれなりに重要な要素ですからね。さらにこの映画はレッサーパンダを大画面で見たい!!!から動き出してますからね。残念です。

私のTLは概ね好評のようですが、今の30代前後の方というターゲットから外れれば外れるほど評価が分かれていってる感はあります。2002年が舞台なので初代プリキュアとかたまごっちとかの世代をターゲットにしてるのは間違いないと思います。ドミー・シー監督を中心としてクリエイター自体の実体験が色濃く出た作品です。その辺は現在配信中の『レッサーパンダを抱きしめて : 『私ときどきレッサーパンダ』メイキング映像 』という作品で確認できます。スケッチブックとかあの行動とかは全部実体験に基づいて作られた作品だったんだ!とわかります。

 

2004年生まれの男はどう観たのか...
結論、めちゃくちゃ面白かったです!!!

 

若干の温度差はあるかもですが、映画としてやっぱり面白いわけですよ。映画って元々生まれや境遇が全く異なる人物を映画を通して理解して楽しむものでしょ?!ピクサー第一弾はおもちゃですからね?!。とにかく興味深いと。監督は2歳に中国からカナダに渡ってきた方で、メイの中国系カナダ人という設定は監督譲りなんですね。エンリコ監督と同じくジブリフォロワーでもあると。日本の影響もそこかしこに確認できます。たまごっちとかね。まず、冒頭の第四の壁を突き破る感じからこの映画の空気感がわかるという(笑)。あれって要するに「私、月野うさぎ。14歳中2〜」のくだりってことですよね。セーラームーンの名前は監督も挙げていました。あの世界にグッと引き込まれる演出だと思います。設定の飲み込ませることにももちろん貢献してますし。ピクサー映画って設定複雑なものがあって『モンスターズ・インク』とかみんな当たり前にドアに入って驚かせてエネルギー作って...って説明できると思うんだけどまぁまぁ複雑ですからね?!それを自分の家のお寺を案内する仕事風景と結びつけて説明しちゃうスマートさ!秀逸ですね。そして漫画をそのままCGにしたようなビジュアル。私の大好きなエドガー・ライト作品のスピーディーさに近いですね。漫画原作の『スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団』とかはその色が濃いので是非!!!集中線が入ったりコマのように分割された画面になったり目がキラキラになったりセーラームーンにもありましたし『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』とか『悪魔バスター★スター・バタフライ』にもこの描写ありましたね。『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』とか『あの夏のルカ』とか等身がねんどろいどくらいの、要するにリアルな7、8等身じゃない感じがまた良くて。レッサーパンダの荒唐無稽さを内包してくれている感じがして非常にいいと思います。別に手を抜いているわけじゃなくてモフモフ描写とかお料理描写はもちろんハイクオリティです。

 

原題『Turning Red』。”赤くなる“とか“赤化”という意味ですね。これはレッサーパンダを意味していますが同時に“恥”の感情になるという意味も込められていそうで、日本語でも赤面なんて言葉がありますからね。他にも赤はいろんな意味で象徴的に登場します。赤いお花とかね。今回は恥ずかしいという感情が逆に良いという珍しいパターンですね。こういうオタク描写が細部まで行き届いていて、たまごっちの名前がロベールジュニアって言う...(笑)キモいけどわかる!!!っていう思春期の恥ずかしさをえぐってくる恥ずかしい描写が全体に渡ってあるんですね。『ミラベルと魔法だらけの家』で僕が酷評した、「家族の集合写真に入れない」っていう主人公が劣等感を感じる無理矢理なシーンが今回はテーマ的にも合致していて現実的という。監督はレッサーパンダは思春期の暗喩だと語っています。レッサーパンダを発症させる元がお母さんですね。近年の「主人公が家族に苦しめられるもの」ディズニーアニメの系譜で、『リメンバー・ミー』とか『ミラベルと魔法だらけの家』とかやむなく部屋に押し込められる感じは『アナと雪の女王』なんかを連想します。以前評論した『ミラベルと魔法だらけの家』では家族写真に入れないっていうやりすぎな演出でしたが今回は美味かったですね。あとは親子ものとしてみなさん挙げている『グーフィー・ムービー ホリデーは最高!』とか『ロード・トリップ パパは誰にも止められない!』とか『ファインディング・ニモ』とかね。強引さはグーフィームービー譲りということで。最高なのがベッドの下のスケッチブックを「見ないで見ないで見ないで見ないで...」って念じながら汗がダラダラになって下を一瞬見ちゃうって言うあのシーン。漫画っぽいコミカルさと黒歴史を掘り返される恥ずかしさが最高でしたね。あとはナプキンのシーンも恥ずかしいものそしての認識があるのを利用したかなりとてつもない演出でしたよね。お母さんが自分の優等生としての一面しか見ていない。オタクの一面は断固拒否って言う構造があるあるというか。サブカルチャーとかオタクは市民権を得ていますがなかなか受け入れられない現状はありますよね。この映画はとにかく人間の2面性をテーマとしている作品ということが分かってきます。この軸があるだけでまぁ見やすい見やすい。友達と連むときの自分と母親の前での自分はおそらく違いますよね。

 

この関係が全部合わさると居心地がとっても悪くなるんですね。卒業式とかでも経験しました。親の前で友達と話しずらい感じはみなさん共通って事でいいですよね?!そういう人の2面性がかわいいかわいいレッサーパンダとして表現されていると。セーラームーンもそうですしがっつり僕が観た中で話すと『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』の主人公マリネットみたいに、変身状態だとキャラが変わるという自分の力の解放としての機能もある。『悪魔バスター★スター・バタフライ』は変身じゃなくてミューニの歴史に触れることで自ら意識が変わっていってその間の母親との対峙が描かれる物語でした。レッサーパンダだったら母親に怒れるし逆にそのせいでライブに行けないというヒーローあるあるになると。決着をぼやかして言うと、『シュガー・ラッシュ:オンライン』のラストのモヤモヤが救われた感じがありました。とっても良かったです。ピクサーで不服に終わったであろう作品として『メリダとおそろしの森』があります。長編女性初監督作品になるはずだったやつですね。娘との関係を映画にしようと進行していましたがいろいろあって監督交代とバタバタがあって完成した作品。評価が悪い訳ではないですがリベンジ的な意味もあると思います。あれは母親が熊になっちゃってって言う話で変身繋がりでもあります。母親と娘の話に集約しすぎたっていうのもあるし、その割には打ち解けていく過程が残念というか。川遊びとか呑気にしてる場合じゃなくね?とか心変わり急じゃね?みたいな。それに大変申し訳ないんですが『ミラベルと魔法だらけの家』でノイズになっていた部分が無くなってものすごく見やすい家族地獄ものになっていました。お母さん悪者ってあんまなかったけどそれが自然な感じはありますよね。対立しがちという意味で。ミラベルはエンカントの中のマドリガル家、マドリガル家の中のミラベルという二重のフィルターがあってミラベルは二重の罪悪感を背負っているんですが実はそれはお姉さんも一緒で苦しんでいた、おばあちゃんはおばあちゃんでエンカントとしてのマドリガルの繁栄を重んじざる負えないことで苦しんでいる、ってことはこれ呪いじゃね?って話が『ミラベルと魔法だらけの家』だった訳ですね。それを断ち切るんじゃなくて更新していく物語だった訳です。これをマジで「呪い」として捉えたのが本作で、やっぱそっちの方が分かりやすくてしっくりくるんですよね。

 

「呪い」これは個性でもあって同時に邪魔な要素でもあるという割と不変的な話になっていると。どんな自分も自分として肯定してくれる話。なんでもいいですよ。アイドルは今でこそ市民権得てますが2002年の頃はおそらく恥ずかしいと思っていた人が多いんじゃないかな?好きならそれでいいんだけど...ね。アイドルライブに行くためにプレゼンをするところも面白いんですが、好きを好きと言っていい話。削除されてしまったシーンには追加して好きは好きでいいという前向きなメッセージがあったかもしれません。そんな自分の大好きだけど恥ずかしい一面をうまく描いています。好きなら好きと言っていいし、好きなら仲間になろうよという目線が入っている。私のフォロワーはディズニーか映画が好きな訳ですからね。4townが5人の理由が説明とかなしに納得させられる感じはすごいですね。あとは当然体の変化とか考え方の変化とかも大丈夫と言ってくれているというのもあると思いますね。

 

人間の2面性というテーマを浮き上がらせてくれるのがお父さんというのも良くて、設定上女性のメインキャラが多くなるのが必然な中で彼がミラベルのように話を聞いて寄り添える人になるという。お父さんはこういう場合大体ギャグキャラに徹するか有害な男性の象徴みたいに使われがちですが、ちょうどいいバランスで決める時にスパッと決めてくれるとってもいいキャラでした。敵対する存在にお母さんを置いたのも新鮮でしたね。ディズニー作品はファミリー層向けを意識してかお父さん特にお母さんは悪役じゃなくて大体上の代なんですよね。『リメンバー・ミー』、『ミラベルと魔法だらけの家』、『スター・ウォーズ スカイ・ウォーカーの夜明け』は全部親じゃなくて更に一個上の世代になってるけどこっちの方がノイズが減るんですよね。「父母は何してんの???」の目線のことですね。「集合写真に自分の娘がいないの気づかなかったんか???」ってことですね!!!(笑)さすが成長するバオとそれを見守るしかない母親の親離れの話でアカデミー賞をとったドミー・シー監督といった感じでしょうか。私の大好きなブリー・ラーソンとダスティン・ダニエル・クレットン監督コンビの『ショート・ターム』、『ガラスの城の約束』、『シャン・チー テン・リングスの伝説』とかも想起しました。『Bao』で最高だった2つの壁、関係うをぶっ壊すシーン。バクーーーーー!ですよ。初見は誰しも驚くあれですよ!今回ものすごく良くて、ロケーションにもこだわっている。メイの部屋をそのままメイの心の中とするならそこに誰が入ってくるのかとか。壁を挟んで覗き見している関係を思いっきりぶち壊すのは誰かなとか。女子トイレで話してたのが広々としたスタンドで話しているとか。同志しかいない開かれた空間を上から割り込んでくるとか。テーマを深掘りするような演出がたくさんあるのでぜひ注意してみてくださいね。

 

あと今回もディズニーに対する痛烈な描写がありましたね。『2分の1の魔法』では着ぐるみが燃えるっていう...。今回は商品展開から撮影会で稼ぐという。アイドルの稼ぎ方みたいなものを意識してるんでしょうけどグリ文化が強い日本のディズニーファンがみるとそれにしか見えないっていうね。

 

家族という呪いと人間の2面性をレッサーパンダに集約させ、親子の物語としてサブカルチャーを通して完成させ、どんな自分も自分というメッセージをストーレートに打ち出せる。女性初監督と持ち上げ、それならではのシーンもあって新鮮でしたが、ピクサーですからどん人物であろうと頭がものすごく良いしクリエイティブだしパーソナルな部分をエンタメ映画に昇華できるポテンシャルが十分に活かされた作品でした!