ユウユの映画の時間

ディズニーすきです

『チップとデールの大作戦 レスキューレンジャーズ』(2022)感想

 

〈あらすじ〉

同名『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』(1989)から30年以上が経過し、忘れ去られた存在となったチップとデールが親友モンタリーを救うために手がかりを追っていくが...

 

チップの声優をジョン・ムレイニー、デールの声優をアンディ・サムバーグ...あれですね、『モンスターホテル』とか、実写だと『パーム・スプリングス』のあの男ですね。他にはJ・K・シモンズセス・ローゲンが脇を固めています。

 

ということで、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』。私も吹替と字幕で計2回観てきました。今回吹替も字幕も両方良かったですね。字幕だとやっぱりJ・K・シモンズ演じるパテ警部がめちゃくちゃ良い。『スパイダーマン』シリーズの時から聴き慣れているあの声ですからね。すごくハマってました。

 

ここでちょっと自分のレスキューレンジャーとの距離感を話しておきたいんですけど、幼い頃から存在は知っていたけどちゃんと見始めたのはつい最近ということで、特別な思い入れみたいなものがあるわけではないんですね。ですが、非常に面白くて気に入っているシリーズで、好きな回は5話『21世紀宇宙の旅』、44話『からくりエンペラー』とか45話『危ないスパイゲーム』はもちろん、64話『タップとシューズ』とかですね。後半になるにつれてクオリティがすごい上がるんですよね。レスキューレンジャーズの楽しさは荒唐無稽なニムナル教授やファット・キャットの企みを暴くヒーロー的な側面がとてもあって、ミステリー要素が強く探偵チックな作品なんですよね。今作冒頭で未視聴の人にもしっかりわかるようなしっかりめの説明が入るのも親切設計かなと。45話はマストで観るべきとしてそれ以外はぶっちゃけ予習という意味では必要ないので気になった方は今すぐ観てくださいね。

 

今作はレスキューレンジャーズよりも他の会社を巻き込んだクロスオーバー、ブラックジョークの数々を楽しみたいという作風。『レディ・プレイヤー1』(2018)や『トムとジェリー』(2021)や『スペース・ジャム』(1996)の続編『スペース・プレイヤーズ』(2021)などカートゥーンの大御所たちが現代に蘇る作品が多数作られていて、それの流れを汲んでいるのは間違いないですね。ディズニーのクロスオーバー大作だと大傑作で今作にも出演している『ロジャー・ラビット』(1988)や『シュガー・ラッシュ』シリーズ、あと私は観れていなくて本当に申し訳ないんですが私が生まれる前に放送されていた『ハウス・オブ・マウス』(2001〜2003)、遡れば『ミッキーのポロゲーム』(1936)、『ポップアップ ミッキー/すてきなクリスマス』(2004)など別に珍しいことではないんですね。しかしやはり『ロジャー・ラビット』で構築された一連の作品をトゥーンという存在で解釈する方式。トゥーンは歳を取らない、基本的に死なない、雄一の殺す方法はディップだけ、アニメが生まれる瞬間などは一切気にすらさせない。映画における何を写して何を写さないかのバランスが絶妙だったわけですね。特殊効果の妙然り、フィルムノワール(※厳密には違うがわかりやすいのでこの表現を使います)としての完成度然り、トゥーンへの解釈然り。今あるトゥーンタウンという概念そもそもを作り出した、非常に重要な作品な訳ですね。それ以前と以後でアニメの捉え方が決まってしまった訳です。だからこそクラリスの見た目がほぼ別人でも「こういう役を演じている」という解釈でもって我々は自制心を保てるのですよ。『レディ・プレイヤー1』や『シュガー・ラッシュ』は時代に合わせてインターネットやゲームを用いてお話を展開しているように、本当なら時代に沿った語りが必要なんですね。わざわざ今回あの『ロジャー・ラビット』を予告にまで出して2Dアニメーションにとどまらず3D、モーションキャプチャー(などを使用したキャラクター)、パペット人形、クレイアニメなどさまざまなアニメ表現を用いてレスキューレンジャーズの実写化をやるということはクリアしなければならない問題がそこかしこにあるんですね。さぁ一体どうだったのか...。

 

ということで、これからですね...。まだJ・K・シモンズのアフレコしか褒めてないんですが以下、ネタバレありで酷評がつらつら連なるのでお好きな方、もしくは観てないという方は『バズ・ライトイヤー』評論でお会いしましょうということでお願いしますね。大丈夫ですね...?

 

これは『トムとジェリー』(2021)のときにも話したんですが、アニメと人間を描く上でやはり重要なのは映画でしか成立し得ないハッタリをどう説得力を持たせるかに尽きると思います。『メリー・ポピンズ』(1964)、『ベッドかざりとほうき』(1971)、『ピートとドラゴン』(1977)はトゥーンを魔法的なものとして描いていて、エリオットは少年にしか見えないトトロ的なものだったり説得力ないやつはないなりの設定が盛り込まれている。当時はアニメーションと実写の融合という話題性で製作していましたからね。ただ今回は明らかに前述の通りの『ロジャー・ラビット』の延長線上にある話なんですね。ただ今作はそこへの説得力が皆無で個人的には乗れなかったですね。説得力はないならないなりに『ザ・マペッツ』(2011)くらいの突き放し具合だったらよかったんですがね。冒頭からしっかりトゥーンと人間が共存している世界が描かれるんですね。ですが、トゥーンの描き方があまりにも不自然なんですね。あと私が前にツイートしたこととしてクロスオーバーや実写化に頼ってて展開される話自体がつまらなかったら意味ないと言ったんですが、それになってしまいましたね。

 

まず冒頭から話していきますが、トーマス・チッペンデール。誰ですかね。鉛筆が目に刺さるギャグ。なんもなかったですね。『フルハウス』。出てないですね。『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の映像が流れるところで存在しない回を流しますね。それは伏線に使うっていう。...いきなり変なんですね。「00デール」って45話のチップの妄想ですけどそれを新番組として使っていたり...。つまりこの現実と向こうの映画内の現実が若干違うんですね。つまり作品内作品にレスキューレンジャーズが収まっていて我々の知っているそれとは全く違うと。バルーやプンバァが超実写版で出てくるけどルミエールはアニメ版。去年あたりに発売されたチップとデールのポップコーンバケツが置いてあるけど人気がないことになっている。この時点でかなり飲み込み辛かったですね。チップとデールがレスキューレンジャーズ一本のかつての俳優という位置付けで物語が展開されているのはどうなんですかねってちょっと思っちゃいました。これは「『マレフィセント』が私の知ってる『眠れる森の美女』じゃない!けしからん!」論争とは少し違って、たしかに『チップとデールの大作戦 レスキューレンジャーズ』はそこにあるけど、それは我々の知っているものとは違う、別物になっているという特有の問題があると思います。これこそ海賊版だよ!?またトゥーンの描き方は描き方で1番問題なのはピーター・パンですね。『南部の唄』、『わが心にかくも愛しき』、『宝島』そして『ピーター・パン』のピーター役、ボビー・ドリスコールの最期を知っていれば知っているほどあのバックグラウンドは避けるはずなんですけどね。彼はディズニーのお気に入り俳優だったが青年になってから荒れ始めて、ドラッグの過激摂取でニューヨーク州ニューヨークで身元不明のホームレスとして31歳の若さで亡くなったんですが...あまりにもブラックすぎる。ちょうど私はこの前『宝島』を観た時にそれを知ったので、いくらなんでもひどいなと思ってしまいました。マコーレ・カルキンとかそれこそロバート・ダウニー・Jr.で本当はやるべきネタですよ。『シャギー・ドッグ』(2006)みたいな。それかオズワルド。ユニバーサル版を海賊版って言って流すの面白くないですか?!しかもその笑いのためにか設定がぼやけるんですね。トゥーンは歳を取らない問題が覆ったわけですよ。別に年を取るならそれで良いんですが、だったらなんでわざわざロストボーイズのあいつをそのまま出したのかって話になりますから、作品内世界の中でも既に設定に無理が出ている。しかも、そいつ海賊版作れる機械持ってるんですよ。海賊版作ってないであの頃の顔にすればいいのに!!それに著作権に引っかかるってトゥーンという存在の権利はアニメ会社に帰属しているってことですか?って話になってくるので大人しくロジャーラビット先輩が築いてくれたルールに乗っかるべきだったんじゃないですかね。しかもディズニーのそれらしいネタってそれだけなんですよ。青く塗っただけのウィル・スミスくらいは出せたでしょって思っちゃいますね。そんな世界の作り込みもままならないのでせっかくのクロスオーバーがまぁ台無し。

 

『フリー・ガイ』(2021)のネタを延々とやってる感じがどうも滑っていて、せっかく自分が好きなキャラクターが出てもワクワクしないんですよね。あとMCUのキャストを意味もなく出すの辞めませんかね?他社キャラ出すならトゥースとラーヤとのコラボとか、シュレックとラルフとかのコラボなんかも見たかったけどな〜。

 

そんなグラグラした世界の上でやることが『ホットファズ』の劣化版って...。レスキューレンジャーズ自体が5匹揃って成り立ってる感じなのでチップとデールはあんまり相性よくないというか、彼らはドナルドとかといた方がよくて2人だけだと基本的に喧嘩しかしてないんですね。その辺ももの足りなかった。犬も最初しか出てこないし。あまりにも救いようがない非常に残念な一作でした。ディズニープラスでやる意味が全くわからないですね。ディズニー作品の歴史をある程度作品に取り入れてですね最近はミッキーとレースしてるとか、最近はクラリスがイメチェンした、とか他作品とも関連付けできますしね。パテ警部の人間とのバトルとガジェット以外は全部良くなかったですね。ツッコミどころを列挙するのもあれなのでこの辺にしときます。