ユウユの映画の時間

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クルエラ感想

今夜の感想キャスはディズニー長編アニメーション映画『101匹わんちゃん』の悪役クルエラの物語で5月27日から劇場で、8月27日からは見放題で公開されている『クルエラ』です。

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物語の舞台は1970年代のロンドン。ファッションデザイナーの夢に向かって、身を削りながら働き続ける少女エステラ。彼女の運命は、伝説的なカリスマデザイナーのバロネスとの出会いによって大きく変わることに……。次第に狂気に染まっていくエステラは、“クルエラ”へと変貌していく。 

(シネマ・トゥデイより引用)

 

監督は『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のクレイグ・ギレスピー。脚本は『女王陛下のお気に入り』のトニー・マクナマラと『ベガスの恋に勝つルール』のデイナ・フォックス。脚本の前段階のストーリー原案は『プラダを着た悪魔』のアライン・ブロッシュ・マッケンナと『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が控えるケリー・マーセル。あとはスティーヴ・ジシスとかも参加してていろいろな人に揉みくちゃにされていますね。のちにクルエラとなるエステラを『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン。バロネスをエマ・トンプソンが演じたということでございます。

 

ということで、もう『クルエラ』観たという方多いと思います。私もイオンシネマ千葉ニュータウンで吹替で1回、シネプレックス幕張で字幕で1回、あとこのタイミングでディズニー+で何回か見返しました。

 

前々からいい意味でのニュアンスで「ディズニーっぽくない!」とかいろいろ言われていて期待値が上がっていました。「ディズニーっぽくない!」に関しては一応ディズニー映画である(つまりファミリーで観ても大丈夫な)ことに落ち着いてはいるんですけどね。

 

はい、ということでご存知『101わんちゃん』に登場するクルエラ・ド・ヴィル。実は実写化は幾度かされていて、1997年の『101』ではグレン・クローズが演じていて、この方、今作ではプロデューサーとして携わっています。あとは『ディセンダント』ではウェンディ・ラクエル・ロビンソンが演じていますね。そして今回はエマ・ストーン。この方、成り上がりものがとにかく似合うって言う(笑)。そしてあんまり良くない結果に終わるっていう...。今作のクルエラは、宣伝では「白黒つけるのは私。」なんて堂々書いてありましたが、非常にグレーに作ってあるキャラですよね。これはエマ・ストーン自身が言及していたんですが、エステラはかなり白と黒の境界線を行ったり来たりするようなコインの裏と表では割り切れない、クルエラ何%エステラ何%という具合に演技に反映していると思います。

 

近年のディズニー、というか映画の流れ的にも、僕はこういう割り切り方で良いと思うんですが、いっちゃえば“悪役にも言い分があるんだ”系の作品であるといえると思います。その感じが取れるのは『オズ 始まりの戦い』(13)じゃないかなと。あとは有名なのが『マレフィセント』(14)と『マレフィセント2』(19)ですかね。僕は両方ともものすごく苦手で例えば一作目はマレフィセントを擬似的な母親と置くことで妖精がすごい嫌なやつになったり、単純にプリンセスとしての話が希薄になってしまっていたりする。あと、全く違う話と割り切っているのにあるシーンはアニメ版を完コピしました!ってなんでだよ!っていう(笑)。なのでそんなに好きじゃないんですが、その系統で1番上手くいったのはやはり同年公開のみなさんご存知『アナと雪の女王』(13)。エルサは元々悪役として設定されていたものをロペス夫妻が手掛けた楽曲「レット・イット・ゴー」があまりにもよくて、悪役ではなくアナのお姉さんにしたというアプローチ。日本では「ありのままの〜」というちょっと残念な訳され方をしてイメージがないと思いますが英語版だとヴィラン誕生ソングにちゃんとなっているので是非聞いていただきたいんですけど、これキャラクターを第一に考えた結果こうなったって言うことで、『マレフィセント』と同時期に公開されながらかなり意識が高い作りになっているという印象だったんですね。それは置いておいて雑にまとめるとこう言うことだと思います、『アナと雪の女王』はヴィランの誕生に対して周り、これはつまり妹のアナがどうするかの話、そして2はそれを踏まえた上でのそれぞれの選択...と言う感じだと思います。今作はどうだったかと言うと、ヴィラン誕生に対して自分がどうするかの話になっているんですね。それは後ほど言及します。

 

そしてそれらをまとめたのがクレイグ・ギレスピー監督。『アイ,トーニャ〜』の手腕が買われたのは間違いないと思いますが、先程列挙したようにさまざまなジャンルの映画を手がけていた人がカチッカチッといるべき場所、パフォーマンスを発揮できる場所にちゃんと配置されているのが今作のうまく行った要因の一つかなと。クレイグ・ギレスピー監督の過去作を振り返ってみると『ラースと、その彼女』とか『アイ,トーニャ〜』とか割と今作と同じような母親と私(主人公)の話だったりしたりする。『アイ,トーニャ〜』に関してはアメリカのいや、世界中の嫌われ者となったトーニャ・ハディングの話ですからね。あと10月ディズニー+で配信のディズニー映画『ザ・ブリザード』。この監督多分車が好き!(笑)最初のシーンが車から始まる。『フライト・ナイト 恐怖の夜』ではコリン・ファレル演じるヴァンパイアから逃げるために車内から轢き殺す一部始終を散ったりだとか、ディズニー+配信中『ミリオンダラー・アーム』でも車の中でのディズニー映画でも稀なゲロシーン、そして車を買い替えることで距離が縮まった感じを演出する。あと、異文化に触れると吐くっていう(笑)エマ・ストーンの『女王陛下のお気に入り』ともゲロモチーフで繋がってますね(笑)『アイ,トーニャ〜』のトーニャ・ハーディングが車好きだったり車の使い方がうまいんですよね。今回はバロネスを負かせる展開で畳み掛けるように車が使われる。例えばバロネスの過去のコレクションをごみ収集車と組み合わせて時代は古いとしたり、バロネス閉じ込めて車の上に乗ったり、名前の由来のド・ヴィルを無免許運転するシーンの縦横無尽さ。あと私が好きなシーンで言うとバロネスとエステラがパーティーに向かう途中で、バロネスが車内で紙の箱に入ったランチを何食わぬ顔でポイ捨てするシーン。あれは個人的お気に入りですね。

 

カメラワークも素晴らしんですよね。『アイ,トーニャ〜』で魅せたスケートシーンを接近したショットで臨場感あふれるシーンあるいは『ザ・ブリザード』の忙しなく乗組員が行き来してるタンカーを縦横無尽に駆け巡るショット、今回もリバティを天井からぐわーっと下がっていって1番下でトイレ掃除をしているエステラに移る場面。勝手にドアが開いたりしていってダークライド的な見せ方でもある。バロネスに会うまでとかを飽きさせずに巧みにカメラワークで魅せる監督さすがと言ったことろですね。この映画やはりバロネスをいかに出し抜くかが楽しいので前半は退屈してもおかしくないんですがそれでも面白い工夫がされている。なんだけど言っちゃえばそこがピークでそこからは終盤にかけて盛り上がりにかける部分はあると思います。仕方ないんですけどね。

 

内容に触れていくと、今作『クルエラ』は自分の中にあるアイデンティティ、つまり彼女の場合はヴィラン性とどう向き合うかの話だと思います。親を失ったことが関わる点では『アナと雪の女王』にも似ていますが、クルエラを隠して生きることからある事実が判明した時の解き放たれた感じっていうのは翼を失ったマレフィセントの暴力性とエレガントさを兼ね備える感じも持っている。ホーレスのコーンフレークを杖で落とすくだりとか最高ですが、あそこで今まで和やかだったムードがピリッとなる。クルエラなのかと思いきや、クルエラをエステラがやりに行ってるようにも見えるエマ・ストーンの演技が素晴らしい。そこから相手をファッションで負かしていく爽快さの見事さは必見ですね。ラストの展開はそれがあるからか、映画として別に問題ない手際の良さで作戦が進んでいくんですが、鈍重に感じてしまうのは仕方ない部分だと思います。それでも100点以上は確実に叩き出してる作品だと思います。

 

エンドロール後のあれはアニメ版のファンサービスということ、また続編への布石として僕は良いと思います。

 

クルエラへのリスペクトもたくさん入ってます。エステラがホテルで盗みをしてるシーンで客室で流れてる映画はヒッチコックの『救命艇』(44)。これ、登場アニメーターがクルエラの参考にした作品ですね。さらにそのシーンで着けているエステラの名札の名前は...?!とかね。とにかくリスペクトもしっかり入ってる作品です。

 

ディズニーの実写の中では間違いなく上位に入る素晴らしい作品でした。