ユウユの映画の時間

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『マーメイド・イン・パリ』感想

パリの街で恋に落ちた人魚と恋をすることができなくなった男の恋愛ドラマ。老舗のバーでパフォーマーとして働くガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚ルラを見つける。美しい歌声で男たちを魅了し、恋に落ちた男の命を奪っていたルラは、ガスパールの命も奪おうとする。しかし、過去の失恋により恋する感情をなくしてしまったガスパールには、ルラの歌声がまったく効果がなかった。2人は次第に惹かれ合っていくが、ルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らなければ、命を落としてしまうという。(映画.comより引用)

https://search.yahoo.co.jp/amp/s/eiga.com/amp/movie/93985/%3Fusqp%3Dmq331AQPKAGYAbfTyZWO_9pWsAEg

 

...ということで『マーメイド・イン・パリ』初日に観てきました。

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とにかく幻想的でいて芸術的。この映画の監督マチアス・マルジウはアニメーション映画の監督経験もあるとのこと。予告にもある人魚の涙が真珠という表現は実写映画ながらアニメーション的で珍しいんじゃないかなと思います。映画の序盤もアニメーションで始まりアニメーションで終わります。あとは人魚のルラでいうと鰭(ひれ)の部分がキラキラしていたりするんですよね。彼女の歌を聴くと恋して心臓が破裂します。つまり死にます。歌がすごくいいメロディ何ですがね。幻想的だけど残酷なんですよ。人魚はフランス語でシレーヌといってギリシャ神話のセイレーンに由来しています。美しい歌声で船乗りを惹きつけて命を奪います。『スプラッシュ』のマディソンのような豪快さもあります。(お酒の一気飲みとか)夫を殺された妻が追跡するという構図も裏でありますがそんなに深掘りはされません。

 

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現実的な舞台に徹底した非現実性が織り交ぜられていてそこの魅力が光っていましたね。人間のガスパールも変な人で序盤はローラースケートで移動してます。パリの街を駆け巡るシーンから始まるので是非注目してほしいポイント。飛び出す絵本も登場します。現実ではありえないくらい飛び出します(笑)その本に秘密もあります。

 

それは老舗のバーとあらすじにあった“フラワーバーガー”にあります。

フラワーバーガーには苦しい世の中でも人々にエンタメを届けてきたお店でガスパール運営してきた家族の子孫になります。その店にはサプライザーというエンタメを提供する人がいます。彼もウクレレの奏者で歌手のサプライザーです。彼は物への執着がとても激しいように感じられます。そこにバーの買収の話が上がってきます。そこには親族がレコードを録音したボックスなど思い出深いものが並んでいます。とにかくセットの作り込みが素晴らしいです。バーの隠れ家的な雰囲気も見事。

 

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映像やセットで言うとお隣さんのロッシがガスパールの帰宅をドアの覗き穴から覗くシーンがあります。『美味しい美女』の鍵穴から覗くシーンを彷彿とさせます。

 

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そしてガスパールの部屋もまた趣向が凝らされていて素晴らしい。部屋の中のプロップは魅力的。一つ一つに何か物語がありそうな物ばかりでした。赤い家具で統一されているし、ビデオデッキも登場(流されてる映画は監督の『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』)しますし、アヒルがとにかく多いです(笑)。真ん中にバスタブがある一室が特に良くてルラと過ごすのは大体ここです。バスタブの周りには例によってアヒルや香水などが置いてあります。ルラがちょっとどかしちゃっりするとガスパールが定位置に戻すんですよね。ここにないといけない!みたいな。物への執着が描かれている描写はかなり多いです。そんな彼が徐々に変わっていきます。彼は過去に何かあったそうで”恋には免疫ができたと“歌っています。特に過去が深掘りもされませんがラストは少しそれに繋がっていきます。

 

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ポスタービジュアルにもあるような青と黄色の合わさった素晴らしい色彩のバランスなどが魅力です。デートシーンなどはそういった魅力が多いので是非注目。

 

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とにかく魅力的で素敵な宝石を詰め合わせたような映画ですね。ジュエリーボックス。共通して孤独な2人が打ち解けるうちに人魚側の視点も入ってきます。それを踏まえた上でもやはり残酷さが常に残ります。犠牲者が結構出ますこの映画。人魚は序盤では昔の怪獣映画ように演出され毎日1人ペースで男を歌で襲います。夫を殺された妊娠発覚した妻のミレナというキャラの不憫さははかり知れませんが特にそこへのフォローはなく敵として描かれます。そして真相を追跡します。結構このシーン多いです。その分とても残念でした。監督の言っていたエマの紹介「最低で最高の娘が現れる」と言っていましたがその最低の部分が無駄に強調されていた気がします。監督は死の危機に一度直面しているからこそもう少しどうにかなったでしょと。

 

あとは無駄なシーンや唐突なシーンが多いです。重要な乗り物にトゥクトゥクがあります。アジア系の人が乗ってたんですが買ったのか強奪したのかずっとそれに乗ります。車だとひれが出せないからでしょうかね。唐突なシーンだと割と重要な出来事につながるタバコとライターですがいつ渡した?ってなります。(本編見たらわかる)

無駄なシーンとしてはトランシーバーを買うシーンがあります。でもすぐ壊します。煙が立ち込める中で歌が聴こえて新たな犠牲者が出るシーンなど余計に思いました。

 

すごいファンタジーに振った物語ですがやはり実写映画でもある。『スプラッシュ』のようなキャラの細かい部分はよくわからないのとは逆にキャラの造形は凝っているが故にいろいろ微妙な部分が多くなってしまった映画という印象でした。パンフでもう少しわかる部分があるかなと思いましたが内容はそこまであったわけではなかったので大好きになったという方以外は買わなくていいでしょう。

 

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